みなさん、こんにちは!Pendemyのコラムへようこそ🐧

第8回のテーマは、STEAM教育における評価の考え方。

子どもたちが作品をつくるとき、つい成果物の見た目や完成度に目を奪われがちですが、STEAM教育で大切なのは“どう考えたか”というプロセス“。

本コラムでは、Pendemyの実践例をもとに、子どもの思考の軌跡に注目する新しい評価の視点を紹介します。

はじめに|評価って、なにを見るもの?

STEAM教育では、テストのような“正解のある学び”ではなく、自分なりの問いや発想から始まる“探究型の学び”が中心となります。

だからこそ、評価の焦点も、「できたか」より「どう考えたか」にシフトさせる必要があります。

子どもが何を感じ、どう工夫し、どんなプロセスで答えに近づこうとしたか——。

その“思考の軌跡”こそが、STEAM教育の核であり、評価の新しいものさしです。

STEAM教育で作品づくりに取り組む子どもたちの様子

評価のポイント❶|工夫や試行錯誤の“痕跡”を見つける

小さな工夫や変更が「学びの証拠」になる

STEAM教育では、完成品の美しさや正確さ以上に、そこにたどり着くまでの「思考のプロセス」が重視されます。

特に、うまくいかなかった場面で立ち止まり、「どうしたらもっとよくなるだろう?」と考え、やり方を変えてみる行動は、非常に価値ある学びです。

たとえ失敗に終わったとしても、試した事実そのものが思考・判断・工夫の痕跡として評価の対象になります。

こうした“変化の履歴”を見逃さず、「どこを変えた?」「なぜその方法を選んだの?」と大人が問いかけることで、子ども自身も自分の思考を振り返ることができるのです。

デジタル工作の中で見えた「試行錯誤の軌跡」

2025年2月に開催された【3Dプリンターで文房具を発明しよう!】では、子どもたちはTinkercadを使って、自分だけのオリジナル文房具をデザインしました。

活動の中では、「思ったより太すぎた」「この角度だと差しにくい」など、使いやすさや見た目に関する“気づき”をもとに、何度もモデルを修正する様子が見られました。

単に形をつくるのではなく、「もっと良くするにはどうする?」という問いが、自然と何度も立ち上がる構造になっていたのです。

ある子どもは、試作したハサミのモデルの穴が小さすぎる気づき、大きさを0.5mmだけ調整。

結果として、「ちょうどよくハサミの刃を抜き差しできる構造」に仕上げることができたと話してくれました。

このような繰り返しの工夫と修正こそ、まさにSTEAM教育の中核である「思考の軌跡」です。

3Dモデルで試作を繰り返し、形状を微調整する子どもの様子

評価のポイント❷|「問い」がどう変化したかに注目する

学びの出発点は“問い”にある

STEAM教育では、「問いを持つこと」がすべてのはじまりです。

しかし注目すべきは、その問いが活動を通じてどう深まっていったか

学びの過程で、子どもがどんな情報に触れ、どんな対話をし、どう問い直していったかが、思考の成熟を映し出します。

サステナブル建築イベントに見る問いの深化

日本科学未来館で実施した【3Dモデルでつくる!サステナブルな東京の都市計画を作成してみよう!】では、「自分がまちづくりリーダーなら、50年後の東京にどんな施設や設備をつくりたい?」という抽象的な問いから始まりました。

子どもたちはワークシートへの記入ややモデル設計を通じて、

「空気を汚す原因のものをエネルギーにできない?」「雨水の再利用ってできるの?」と、構造・機能・素材など複数の視点に発展させていきました。

このように、問いが「気づき」によって変化するプロセスは、子どもたちの探究の深まりを見える化する上で極めて重要です。

日本科学未来館でサステナブル建築を考えながら問いを深めていく子どもたち

評価のポイント❸|仲間との関わりから学びを評価する

協働によって生まれる“思考の化学反応”

STEAM教育の多くは、グループでの対話や協働を前提としています。

「自分ひとりでは思いつかなかった」アイデアが、他者との関わりによって生まれる——そんな場面がたくさんあります。

こうしたやりとりそのものを評価に取り入れることで、単なる知識理解にとどまらない社会的・創造的な学びを可視化できます。

プログラミング花火イベントで見えた“次につながる学び”

プログラミングで未来の花火をデザインしよう!】では、発射する花火の点の、色・形・数・音などを個人で設計。

作品発表の際には、「この色だと夜空に映えそう」「でも、タイミングをずらすと軌跡がずれるかも」「この音面白いね!」と、活発な対話が自然と生まれました

これらの過程における対話の量・質・姿勢は、単に「うまく打ち上がったか」以上に重視すべき評価軸です。

特に印象的だったのは、その対話が過去の振り返りに留まらず、「次はこうしてみたい」という前向きな学びへとつながっていたことです。

「次やるときはリズムを変えてみたい」「〇〇君のも真似して、こんなふうにしてみたい」といった声が多く聞かれ、他者とのやり取りを通じて自分の思考を更新していく様子が見られました。

このように、「協働を通じたふりかえり」自体が、次の探究を生む足がかりになることは、STEAM教育における非常に大切な評価ポイントです。

完成後の作品を振り返りながら次の改善点を話し合う子どもたち

おわりに|評価のまなざしを“成果”から“過程”へ

子どもの学びを“たどる”視点を持とう

STEAM教育では、完成品はあくまで学びの“結果”であって、“全体”ではありません。

大人が意識すべきは、「どこで迷ったか」「どう変えたか」「誰と何を話したか」といった、子どもの思考の痕跡です。

「なぜその形にしたの?」

「最初とどこが変わった?」

「誰の意見がヒントになった?」

こんな声かけが、子どもたちの学びを深く、確かなものにしていきます

🔍もっと知りたい方へ|Pendemyのイベントレポートはこちら!

Pendemyでは、さまざまなSTEAM教育の実践を公開しています。

▶︎イベント実施レポート一覧