みなさん、こんにちは!Pendemyのコラムへようこそ🐧

第6回目のテーマは、文部科学省も提唱している教科横断的な学習について。

今回は実際にPendemyが実施してきたSTEAMイベントの中から、教科の“つなぎ方”に焦点を当てた事例をご紹介します。

はじめに:「教科横断型のSTEAM教育」は、実はこんなに難しい?

STEAM教育が注目されるなか、学校現場や教育関係者からこんな悩みをよく耳にします。

「STEAMが大事って聞くけど、教科をどう組み合わせたらいいかわからない…」

「全部の教科を盛り込まないといけないの?無理があるのでは…」

実は、“教科をつなぐ”というのは簡単なようでとても奥が深い設計です。

今回は、実際にPendemyが実施してきたSTEAMイベントの中から、「自然な教科横断」を生み出した事例をご紹介します。

そもそも、なぜ「教科横断」が必要なのか?

文部科学省が推進するSTEAM教育は、科学(Science)・技術(Technology)・工学(Engineering)・芸術(Art)・数学(Mathematics)を統合的に扱う教育です。

しかし、その目的は「教科の数を増やすこと」ではありません。

大切なのは、現実の課題や探究テーマに対して、複数の教科の視点を使って考えるというアプローチです。

つまり、「教科横断」とは、問いを中心に、教科の壁をほどいていくことなのです。

どんなふうに“つなぐ”の?教科横断の3つの実例

ここからは、Pendemyが実施したSTEAMイベントの中から、実際に教科が有機的に結びついた事例を3つご紹介します。

花火をデザインしよう!|数学 × 理科 × 技術

タブレットでScratchの花火プログラムを操作しながら、真剣な表情で学ぶ小学生たちの様子。STEAM教育の現場で数学や理科とプログラミングを組み合わせた実践例。

■イベント名

目指せ!花火職人!プログラミングで未来の花火をデザインしよう!

■教科のつながり

  • 数学:sin/cos を用いた軌道設計
  • 理科(物理):重力・初速度などの概念理解
  • 技術:Scratchによるビジュアルプログラミング

■ポイント

“花火をつくる”というワクワクするテーマに、運動と数式が自然と入り込む構成です。

小学生向けに実施した際には、直感で試行錯誤できるよう基本プログラム配布、

高校生向けに実施した際には、sin/cosの仕組みや座標の復習も織り交ぜた上で、

プログラムの解説を行いました。

ビジュアルで試行錯誤できるため、数式への抵抗感が少なくなります。

未来の文房具を発明しよう!|社会 × 図工 × 理科

タブレット上のTinkercadでオリジナル文房具の3Dモデリングに挑戦する小学生の手元。STEAM教育の実践として、図工と技術を融合させたデジタル工作の様子。

■イベント名

3Dプリンターで文房具を発明しよう!〜プロジェクト型学習でモノづくり体験〜

■教科のつながり

  • 社会:文房具の歴史について、現代の不便・使いにくさを観察
  • 図工(美術):3Dモデリングによるアイデアの可視化
  • 理科:素材の特徴や環境への影響を考慮した設計

■ポイント

このイベントでは、子どもたちが作ってみたい!こんな文房具が欲しい!という気持ちに寄り添った内容にしましたが、

例えば、テーマを「社会に必要な道具」などに設定するだけで、アイデアが一気に“社会課題”と結びつきます。

植物・動物の図鑑をつくろう!|理科 × ICT × 国語

屋外で土や植物を観察し、スマートフォンで記録する小学生の様子。STEAM教育の一環として、理科の探究活動とICT活用を組み合わせた実践場面。

■イベント名

AIを使って植物と動物のデジタル図鑑を作ろう!

■教科のつながり

  • 理科:動植物の観察、分類、特性理解
  • ICT:画像分類AI、クラウド上での記録管理
  • 国語:「観察結果を伝える」記述活動

■ポイント

観察して終わりではなく、「どう伝えるか?」まで含む設計にすることで、理科的な要素の中に表現力、言語力を組み込むことができます。

また、AIツールの導入で子どもたちのICTリテラシーも養うことができます。

教科を“つなぐ”ために大切なこと

「教科横断」で本当に大切なのは、1つの学びの中で、各教科がどんな“役割”を果たせるかを見極めることです。

PendemyのSTEAM実践の中で見えてきた、教科を自然につなぐためのポイントは以下の3つです。

「問い」によって“教科の必要性”が生まれる

たとえば、「未来の花火をつくろう!」という問いを設定したとき、

• 見た目をデザインする → Art(芸術)

• 高く飛ばすにはどうすればいい? → Science(理科)

• 軌道をどう描く? → Mathematics(数学)

• それをどう作る? → Technology(技術)

といったように、自然と教科ごとの“役割”が浮かび上がってくるのです。

無理に教科を組み合わせるのではなく、「この問いに答えるには、どんな視点が必要か?」と考えることが、教科をつなぐ第一歩です。

「教科はパーツ」視点で設計する

1つの活動全体を「算数の授業」にしたり「理科の実験」にしたりするのではなく、1つのプロジェクトの中に、教科の要素を“素材”として埋め込むように設計します。

たとえば、「図鑑を作る」というプロジェクトなら、

• 生物を観察 → 理科の目

• 観察結果を言葉でまとめる → 国語の力

• 画像をデジタルで整理 → ICTのスキル

のように、それぞれの教科が「この部分で活躍する」と明確に役割を持たせて設計することが、横断のコツです。

教科の“順番”を意識すると学びが深まる

教科横断を成功させるためには、どの教科の視点から始め、どのタイミングで別の教科につなげるかという“順番”を意識することがとても重要です。

なぜなら、子どもたちの思考は「問い → 発見 → 表現 → 振り返り」といったプロセスを踏んで深まるからです。それぞれのフェーズで「どの教科が必要になるのか」を設計することで、学びの焦点がぶれず、理解も定着しやすくなります。

たとえば、「生き物図鑑をつくろう!」という探究活動では…

1. 観察する(理科)
 植物や動物を観察し、「何がわかった?」「どんな特徴がある?」と理科的に見る力を育てる。

2. 記録・整理する(ICT)
 写真を撮ったり、特徴を分類したりして情報を構造化。視覚化によって「違い」や「傾向」が見えてくる。

3. 伝える(国語)
 見つけたことを文章にまとめ、ほかの人に伝わるように言葉を選び、表現を工夫する。

このように、順序立てて教科の役割を配置することで、子どもたちの思考の流れと一致し、各教科の“使いどころ”が際立ちます。

つまり、教科を“つなぐ”とは、単に混ぜるのではなく、“順番”で意味を持たせること

この設計の工夫によって、学びが「ただの体験」ではなく、子どもたちの思考を育てるプロセスへと変わっていきます。

おわりに|STEAMの本質は“つなぐ”ではなく“ひらく”こと

教科横断の本質は、教科を無理につなぐことではなく、問いのために教科を“ひらいて”使うことにあります。

「これは算数?それとも理科?」と区切るのではなく、「この問いに対して、何の視点が必要か?」と考える。

そんな柔軟な設計ができたとき、子どもたちの探究心と創造力は、一気に開花します。

まずは一つの問いと、それに応えようとする“教科の役割”を考えるところから始めてみてください。

難しく考えすぎず、小さな実践を重ねることで、“教科をつなぐ力”は自然と育っていきます。